丸みを帯びたかわいらしい形状と温かみのある明かりで、女性キャンパーやインテリアとしても人気が高まった「ベアボーンズのレイルロードランタン」。
そのルーツは、戦前よりアメリカとカナダの鉄道会社で使われてきたランタンに由来します。
今回は、そのルーツとなったランタンのお話をしてみようと思います。
レイルロードランタンとは?
レイルロードランタンは、その字のままに鉄道会社で使われていたオイルランタンです。
今ではLEDの信号機が当たり前ですが、当時の信号灯はこのオイルランタンが使われていました。
鉄道を安全に走らせるため、風から「灯り」を守るグローブが割れないように、フレーム一体型のグローブガードが施された特徴的なフォルムとなり、半世紀にわたり活躍しました。
独特の武骨な佇まいが、古き良き時代を感じさせます。
当時のメーカーは主に2つ R.E.DIETZ社 と Adams & Westlake社
①R.E.DIETZ社(デイツ)
デイツ(DIETZ)の歴史は古く、1840年にアメリカ合衆国のニューヨークにて照明製品の会社として創業しました。
当時、画期的だった平芯を用いたランタンの製造をいち早く始めました。また、暴風の中でも使用できる「ハリケーンランタン」の技術を応用し、この技術は後のデイツのハリケーンランタンにも受け継がれてきました。
現在では香港を拠点としてランタンの製造を続けています。
②Adams & Westlake社(アダム&ウエストレイク) 通称アドレイク
創業は1857年。
150年以上の歴史を持つ、現在も鉄道用品全般を手がけているアメリカの会社です。
アダムス氏とウエストレイク氏が共同で創業したことからAdams & Westlake Companyと名付けられました。ロゴにもありますが、略してAdlake(アドレイク)の名で親しまれています。
創業の1857年はAdlakeの前身となる会社の創業年です。
1874年にアダムス氏とウェストレイク氏の会社が合併してAdlakeと社名が変わりました。
その後、アドレイク社は、1900年代初頭には鉄道用品全般を手がける最大手の会社の一つまでに成長しました。
デイツ ベスタ レイルロードランタン
今回ご紹介するのは、デイツ(DIETZ)の代表的なレイルロードランタン。
デイツベスタです。
製造期間は、1906年~1957年までの約半世紀。
西部開拓時代から1960年代頃までの鉄道業界で使用されていました。
フードに施された刻印から、製造年月日を知ることが出来ます。
PATENTED(特許取得済み)
JULY30-07
MAY 4-09
JUNE 1-09
DEC 18-10
S-3-27
製造年月日は一番下「S-3-27」より判断することが可能です。
S→シラキュース工場製造で、1927年3月製造
1956年に香港工場が設立されたのに合わせて、特許取得日と製造年月日を刻印することは廃止されたようです。
コールドブラスト機構
デイツベスタはデイツ社のレイルロードランタンでは唯一の「コールドブラスト式」となっています。わかりやすく言えば、ハリケーンランタンの仕組みのことです。
冷たい新鮮な空気がグローブ上部から吸い込まれ、チューブを通って炎に送られて燃焼を安定させる仕組みです。
現在でも市販されているフュアーハンド276やデイツ#76も同じ機構です。
パラフィンオイルを使って、効率よく燃焼させることで、より明るさを上げることに成功した機構だそうです。
これに対して「ホットブラスト式」というのもあります。
ホットブラスト式とは、燃焼した熱い空気を循環させる仕組みです。当時、安い粗悪な灯油でも安定した明るさを出せたことから、一般に普及したそうです。最初に生み出されたのはこちらの方式が先です。
フードの取り外し方
フードはフロントのフックを奥に押し込みながら持ち上げると外せます。
フードをそのまま奥に引き上げます。
フードを上げて、グローブを外した状態。
フードの左右の穴は、本体の支柱パイプとつながっています。
フードの取り込み口から取り込まれた新鮮な空気がこのパイプの中を通ってバーナー部へ降りていきます。※逃がしきれなかった一部の熱い空気も循環します。
バーナー部の外周にも空気穴があり、ここからも外の新鮮な空気を取り込むことで燃焼効率が上がり明るさが増すというわけです。これがコールドブラスト式。
独特の形状をしたグローブ
グローブには、サンドブラストでN.Y.C.LINES(ニューヨーク中央鉄道) の刻印。
この個体の後の時代はエンボスのロゴをよく見かけます。
タンクの外し方
オイルタンクは、反時計回りに回してロックを解除して外します。
ロックを外すと、タンクが取り外せます。
バーナー部の外し方
バーナー部とタンクは、フックで固定されています。
バーナー部を、反時計回りに回すとロックが外れます。
細部まで、しっかりした造りですね。
この状態でオイルタンクに給油できます。
芯について
他のランタンでは、なかなか見かけない太さです。
12㎜もある「4分芯」なので、一般的なオイルランタンよりも明るいです。
バーナー部の構造は、フュアーハンドランタンと変わりません。
画像では見えませんが、タンク内は単純な空洞ではなく、開口部の直下は途中まで鉄板で囲われています。
個人的な推察ですが、おそらく倒れた際に一気に燃料が漏れてしまうのを防ぐためではないかと考えています。
燃料はパラフィンオイルがおすすめです。
灯油は使えない事はないですが、ものすごく煤が出ます。
点火の際は、芯は少し出すだけで大丈夫です。5㎜くらいで十分。
芯が太いので、出しすぎていると結構な炎が上がります。ご注意を!
炎が付いたら、芯を戻して調整します。
そのまま本体にインストールして完了
タンクと本体のロックは確実にしましょう。ロックがかかっていないと、タンクが脱落します。
なお、点火はトップフードを外してつけるやり方もありますので、やりやすい方で良いと思います。
フュアーハンド276と比較
フュアーハンド276と一緒に並べてみました。
炎の大きさが違いますね。芯が太いだけあって、フュアーハンドの2倍くらいあります。
燃焼時間は、満タンに入れると、一晩は余裕で持ちます。ソロなどは、メインランタンとしていけます。
まとめ
デイツベスタレイルロードランタン
一般的なフュアーハンドランタン276ベイビースペシャルと比較すると、ベスタは芯が太いので格段に明るいです。
燃料は、パラフィンオイルがおすすめです。灯油も使えますが、煤がでますのでおすすめしません。
何よりも、北米の開拓時代を支えてきた佇まいは、インパクト大ですね。これが、サイトにあるだけでカッコいい!
ソロは、バップテントなどとの相性が抜群だと思います。
手に入れる機会があれば、一つは持っておいていいランタンだと思います。
コメント
バーナーの芯を出し入れする部品が無いんですが、276、79、の部品でベスタの代用は可能でしょうか⁉︎
教えて頂けませんか!
形状は似ていますが、試したことがありません。
手元のベスタは全て売れてしまったので確認できませんが、おそらく径が違うことと、タンクとの接合部の形状が異なるので、代用できないと思います。
もし径が合った場合でも、接合部の噛み合わせを加工する必要があります。専用のものを探されることをおすすめします。